麻酔について
麻酔は、単に痛みをとるだけのものと、一般の方は考えられているようです。
しかし、本当の麻酔(麻酔科医)の仕事は、手術が安全に、かつ痛みなく行われるように、患者さんを手術中、常にお守りすることにあります。
麻酔医は、手術が始まる30分前ぐらいから麻酔を開始し、手術が無事終わり、手術室から病棟に帰るまで、ずっと側について、患者さんを見守り続けています。
血圧下がれば、上げ、上がりすぎれば下げます。体温も管理します。呼吸がとまれば人工呼吸をし、心臓の動きにも常に注意を払っています。現在では、麻酔が終わって病棟に帰った後も、痛みがこないよう努力しています。
ですから、皆さんが麻酔科医の存在に気がつかず、快適にいつのまにか手術が終わっていたとすれば、それは麻酔科医の本望なのです。
ですが、できれば少しでも、麻酔科医のことを知って頂くと、より安心して医療がうけられる可能性があります。
最近「患者は、こうして殺される。」(飛鳥新社)という本が、我々の先輩の麻酔科医(元癌研究会付属病院麻酔科医長 浅山 健先生)によって出されています。その中で、自分達の身を守るためには、安全な病院を見つける必要があり、麻酔指導医がいることが、手術をうける上で一番肝心と述べておられます。日本麻酔科学会のホームページで、指導病院の検索が可能です。
だだこのリストに載っていなくても、麻酔指導医のいる病院がたくさんあり、目下全国の麻酔科が協力してリストを作成中です。
麻酔科医の数は、まだ米などと比べるとはるかに少ないのです。麻酔科医が少ないため、日本では、5万例に1例程度麻酔によって患者さん生命が危険にさらされる可能性があります。米では25万例に1例と少なく、麻酔科医の増加が大きな要因のひとつだそうです。
ちなみに日本では、麻酔科医数は、人口10万人あたり平均6.2人ですが、アメリカでは人口10万当り13.2人 イギリスでは
11.2人 ドイツでは 15.4人だそうです。(いずれも浅山先生のデータです。)
今後皆さんに少しでも、麻酔のことがご理解いただけるように努力し、麻酔科医が少しでも増え、麻酔事故が減少することを期待しています。