脊椎麻酔(下半身麻酔)について
麻酔専門医以外では、もっとも行われている麻酔です。
例えば、盲腸(虫垂炎、ちゅうすいえん)などで、外科の先生が一人で開業しておられるところで手術をうけた方の麻酔は通常この麻酔です。簡単な麻酔法ですが、専門医が行わないことが多い、という点が問題です。
このため、麻酔専門医がいれば別ですが、麻酔と手術を同時に、同じ医師が行う時に危険が生じます。
実際の手順:
手術台の上で、横向で背中を丸めた状態になってもらいます。背中を消毒した後、裁縫で使う縫い針程度の大きさの注射針を背中の背骨と背骨の間に刺します。
痛み止めをしながらしますので、チクリとする程度で、脊髄(実際には、脊椎麻酔を行う腰部では、脊髄ではなく、馬尾神経という神経の束になっています。)に直接あたらない限り、あまり痛くありません。
脊髄は、その周りに脊髄腔(せきずいくう:正確にはクモ膜下腔といいます。)があり、そこは脳脊髄液(のうせきずいえき)という透明な液体で満たされています。
針を、この脊髄腔まで進めます。直接神経には、当たらないよう針を止めます。よく「昔、背中から麻酔をされた時、ひどく痛かった。」言われることがあります。たぶん昔の外科医の先生達は脊髄に当てて麻酔をしていたからでしょう。
*硬膜外(こうまくがい)麻酔という同じような下半身麻酔があります。、この麻酔では、脊髄腔の直前で針を止めます。言うなれば「寸止め麻酔」です。
針から、脳脊髄液がゆっくりかえってきたら、局所麻酔薬を1−2mlゆっくり注入します。
左右片方の下半身だけで麻酔がよい場合には、横向きで下になっている方だけ効くように、5−20分程度そのまま横向きになったままの状態でいていただきます。(局所麻酔薬の種類によっては、上になっているほうが、効く場合があります。
薬が注入されると、まず足が暖かくなってきます。続いて、感覚がなくなってきて、最後に足が動かなくなります。
仰向けになって手術が始まります。(手術部位によっては、反対を向く等、いろいろな体位をとります。)
手術中は、術者やスタッフの声や、様々な音がしますので、眠って頂くことが多く、ほとんどなにもわからない状態で手術が終わります。
麻酔中(手術中)に起こること:
血圧が下がりやすい麻酔です。まれに心臓が止まったりします、しかし、しっかり麻酔科医がついて管理すれば安全です。
術後に起こること:
手術翌日から1週間の間に、頭痛が起こることがあります。だいたい1週間を過ぎれば、消失します。
頭痛が1週間しても消失しない時は、主治医にご相談ください。